OLTPとOLAPデータモデルの違いと設計のポイント
OLTP(Online Transaction Processing)とOLAP(Online Analytical Processing)は、データベースの利用目的によって異なる2つの代表的なデータ処理モデルである。それぞれの用途、特徴、設計思想の違いを理解し、適切なデータモデリングを行うことが、システムの性能とビジネス成果を大きく左右する。
1. OLTPとは?
OLTPは日々の業務で発生するトランザクション処理(登録・更新・削除など)を高速に処理するシステムを指す。
- 主な用途:注文処理、顧客管理、在庫管理、POSなど
特徴:
例:ある小売チェーンでは、各店舗のPOSレジがリアルタイムで売上を記録し、在庫を更新する仕組みをOLTPで実現。処理時間は1トランザクションあたり0.1秒以内。
2. OLAPとは?
OLAPは蓄積された大量データに対する集計・分析処理を目的としたモデルである。
- 主な用途:売上分析、傾向分析、KPIダッシュボード、BIレポート
特徴:
例:同じ小売チェーンでは、月次の売上レポートをOLAP用データマートで作成。全店舗・商品カテゴリを横断した集計が可能で、1回のクエリで1000万件以上のデータを処理する。
3. モデリングの設計思想の違い
比較項目 | OLTPモデル | OLAPモデル |
---|---|---|
目的 | 業務トランザクション処理 | データ分析と可視化 |
データ構造 | 正規化 | 非正規化(スター型、スノーフレーク型) |
更新頻度 | 高い(頻繁な書き込み) | 低い(主に読み込み) |
ユーザー | 業務担当者、システム | アナリスト、経営層 |
トランザクション | ACID | BASEまたはバッチ同期 |
4. ハイブリッドな設計とETLの役割
実際のシステムでは、OLTPとOLAPは独立して存在するのではなく、ETL(Extract, Transform, Load)プロセスを介して相互連携する。
ETLの流れ:
- OLTPで収集されたデータを定期的に抽出(Extract)
- 集計・正規化解除・クレンジングなどを実施(Transform)
- データウェアハウスやデータマートに格納(Load)
あるECサイトでは、OLTPの注文データを1時間ごとにバッチ処理でOLAP環境へ反映。これにより、リアルタイム性と分析性を両立している。
5. よくある失敗と注意点
- OLTPに集計系クエリを混在させ、処理遅延が発生
- OLAPに正規化しすぎた構造を適用し、分析が困難に
- ETL処理が重くなり、分析環境の更新が遅延
まとめ
OLTPとOLAPは役割も設計方針も明確に異なるが、ビジネスを支える情報基盤としては両輪である。リアルタイムに信頼できるデータを記録し(OLTP)、それを活用して未来の意思決定を導く(OLAP)——そのためには、目的に応じた適切なデータモデリングとアーキテクチャ設計が欠かせない。
そして最も重要なのは、現場での使われ方を想像しながら設計すること。データモデルは技術でありながら、最終的には「人の行動」を支える構造であるべきなのだ。