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MongoDBデータ構造の最適化アプローチ

MongoDBにおけるデータモデリングの基本

MongoDBはドキュメント指向のNoSQLデータベースであり、JSONライクなBSON形式でデータを格納する。RDBMSとは異なり、スキーマレスかつ非正規化設計を前提としたモデリングが求められるため、データのアクセスパターンと用途に応じた柔軟な設計が重要となる。


1. MongoDBデータモデルの特徴

  • ドキュメント単位でデータを保持:1つのドキュメントに複数の属性やネスト構造を持たせられる
  • スキーマレス設計:必要に応じて異なる構造を持つドキュメントも同一コレクションに格納可能
  • JOIN不要の非正規化設計が主流:頻繁に使われる情報は1つのドキュメントにまとめて保持
  • インデックスの柔軟な活用:単一・複合・ネスト・部分インデックスなど多彩に設定可能

ある動画配信プラットフォーム開発プロジェクトでは、急増するコンテンツ情報・視聴履歴・ユーザー設定を高速に処理する必要があった。リレーショナルDBではJOINの負荷が高まり限界が見えたため、MongoDBに移行。視聴履歴・レコメンド・評価情報を一体化したドキュメントで保持する設計に変更したところ、検索応答時間が4倍高速化。ユーザーはストレスなく動画を再生・評価できるようになり、滞在時間が平均15%伸びた。


2. モデリング方針:Embed or Reference?

MongoDBでは、複数のエンティティ間の関係を「埋め込み(Embed)」か「参照(Reference)」で表現する。

  • Embed(埋め込み)

    • 関連データを1つのドキュメントにまとめる
    • 読み取り回数を減らし、パフォーマンス向上
    • 例:注文ドキュメントの中に商品詳細を配列で保持
  • Reference(参照)

    • ObjectIdで他のドキュメントを参照
    • データの一貫性や再利用性を確保
    • 例:ユーザーIDを使って別コレクションのプロフィールを取得

某スタートアップでは、すべてを参照設計にした結果、ユーザー画面の表示時に5回以上のDB呼び出しが必要となり、表示が重くなってしまった。Embed設計へ切り替えたことでレスポンスが劇的に改善され、「設計思想の転換がサービス成長の鍵だった」と語られている。


3. モデリング実例:ブログアプリケーション

  • 投稿(Posts)

    • title, body, tags[], createdAt, author(参照)
  • ユーザー(Users)

    • name, email, profile, settings
  • コメント(Comments)

    • postId(参照), content, commenterName, createdAt

投稿とコメントは別コレクションに分けて設計することで、ページ単位の読み込みとコメント単体の更新・削除が容易になる。


4. パフォーマンスを意識した設計の工夫

  • アクセス頻度の高い項目を最上位に配置(BSONパース効率)
  • 頻繁な更新がある項目は埋め込みを避ける
  • インデックス設計をクエリ単位で最適化(複合・部分・TTLなど)
  • 読み込み専用のレポート用コレクションを別途作成(集計済みの冗長データ)

某教育系アプリでは、成績情報をリアルタイムに表示するために、レポート用コレクションを別途設けてパフォーマンスを確保。教師・保護者からのフィードバックも「即時に反映されて便利」と好評だった。


5. よくある失敗例

  • すべてを埋め込みすぎてドキュメントサイズが16MB上限を超過
  • 頻繁に更新が発生する履歴データを埋め込んで、全体の書き換えが過負荷に
  • 正規化しすぎて毎回複数のクエリ・集計が必要になり、レスポンス遅延が発生

まとめ

MongoDBのデータモデリングは、「どう構造化するか」ではなく「どう使われるか」から考えるべきである。アクセスパターンを読み解き、EmbedとReferenceを使い分け、インデックスやスキーマ設計をクエリ起点で調整することが、スケーラブルかつ高速なMongoDB設計の鍵となる。

そして何より、設計の本質は“柔軟さの中にある秩序”を築くこと。MongoDBは自由度が高い分、設計者の判断が直接システムの品質に影響する。その責任と可能性を理解することが、MongoDBデータモデリング成功への第一歩である。