okpy

Pythonエンジニア兼テックリーダーが、多くのプロジェクトとチーム運営から得た実践的な知識を共有するブログです。

ビッグデータモデリングの基本:Google BigQueryの特徴

BigQueryにおけるビッグデータモデリングの基本

Google BigQueryは、サーバーレスでスケーラブルなデータウェアハウスであり、特に大規模なデータ分析に適している。SQLベースで操作可能でありながら、高速なクエリ性能と柔軟なストレージ設計が特徴である。


1. BigQueryモデリングの特徴

あるリテール企業では、毎日数千万件の販売・在庫・顧客行動ログをBigQueryに投入し、BI・ML・マーケティング施策の意思決定を加速させている。


2. モデリング構成の基本方針

  1. フラットなスキーマ構造を基本とする:結合コストが高いため、ネストやRECORD型を活用し非正規化を推奨
  2. 時間ベースでのパーティショニング:created_at や event_date による日次パーティションでコスト最適化
  3. クラスタリングキーの選定:検索頻度の高い列(user_id、product_idなど)でクラスタリングしてフィルタ高速化
  4. 外部テーブルやCloud Storageとの連携:未加工のCSVやParquetデータもそのままクエリ対象とできる

3. モデリング例:ECサイトのデータ構造

  • transactions:transaction_id, user_id, item_list[], total_price, transaction_date (PARTITIONED)
  • users:user_id, gender, region, signup_date (CLUSTERED by region)
  • products:product_id, category, price, stock_level

トランザクションテーブルは、1日の売上・リピート傾向を把握するパーティショニング、ユーザー属性と組み合わせた分析にはJOINを使うが、必要最小限に留めている。


4. 運用と最適化のポイント

  • 日次バッチではなくストリーミング挿入も可能(リアルタイム性が求められる場合)
  • サブクエリで集計結果を事前に作成し、マテビュー(Materialized View)でキャッシュ可能
  • BigQuery BI Engineの活用で、ダッシュボード表示を秒単位に短縮
  • アクセスログの監視(INFORMATION_SCHEMA.JOBS_BY_*)でコスト監視・最適化

5. 実務上の課題と対処法

  • JOINの多用でスキャン量が激増 → スター型設計、LOOKUP関係のJOINはクラスタリングと併用
  • フィールドのネスト構造が深くなりすぎてパフォーマンス低下 → 必要最小限に設計
  • 過去データの頻繁な変更によりパーティション更新コストが増大 → 分離テーブル戦略(current / history)を採用

あるゲーム会社では、プレイヤーログをネスト型で保存したことで、課金傾向やセッション分析を高速に処理できるようになった。


まとめ

BigQueryでのデータモデリングは「速度・コスト・スケーラビリティ」を同時に実現するための知恵の積み重ねである。

リレーショナルの常識を超えて、非正規化やパーティション設計、クラスタリング、RECORD型活用などを柔軟に取り入れ、ビッグデータを「扱える情報」へと変換する設計が求められる。

そして何より、BigQueryは“思考の速さ”がそのまま“ビジネスの速さ”につながる武器となる。