レッドチームエンジニア(Red Team Engineer)のプロジェクトポジション
1. レッドチームエンジニアとは?
レッドチームエンジニアは、組織のセキュリティ体制を評価・強化するために、実際の攻撃者を模倣して攻撃シナリオを実行する専門家です。ブルーチーム(防御側)との連携により、実践的な脆弱性の発見と対応力の強化を目指します。
たとえば、あるレッドチームエンジニアは、内部ネットワークに対するフィッシングからの侵入と水平移動を通じて、EDR検出を回避しながら機密データへのアクセスを実現し、対応プロセス全体を可視化しました。
2. 主な業務
- 攻撃シナリオの設計と実施(APT模倣、ソーシャルエンジニアリング)
- ペネトレーションテストおよび脆弱性の実証(PoC)
- レッドチーム演習の計画と実行(Red Team Exercise)
- ブルーチームとの協働による対応力の評価と改善提案
- 攻撃チェーン(MITRE ATT&CKベース)の検証
- レポート作成および経営層向けの提案
3. 必要なスキルとツール
技術スキル
- Windows/Linux環境での攻撃技術(Lateral Movement、Privilege Escalation)
- Active Directoryの理解と攻撃技術(Kerberoasting、DCsyncなど)
- クラウド環境(AWS、Azure)のセキュリティ評価
- OSINT、C2フレームワーク(Cobalt Strike、Sliver、Mythicなど)
使用ツール・知識
- Kali Linux、Metasploit、BloodHound、Responder、Impacket
- MITRE ATT&CK、NIST CSF、TTP(Tactics, Techniques, Procedures)
- Python、PowerShell、Bashスクリプト
4. レッドチームエンジニアの協業スタイル
- ブルーチーム(SOC/CSIRT):インシデント検出・対応能力の評価
- ITインフラチーム:脆弱性の発見と修復支援
- 経営層/CISO:セキュリティギャップの報告と改善提案
- 開発チーム:セキュアコーディングとCI/CD環境の評価
- 外部ベンダー:レッドチーム演習の共同実施やツール共有
5. キャリアパスと成長の方向性(レッドチームエンジニア)
レッドチームエンジニアは、実践的な攻撃技術とセキュリティ戦略の両面を担うプロフェッショナルです。ペネトレーションテスターやセキュリティエンジニアからキャリアをスタートし、実戦経験と脅威分析力を積むことで、より戦略的なポジションへと成長します。
主なキャリアパス
- セキュリティオペレーター → ペネトレーションテスター → レッドチームエンジニア
- SOCアナリスト → 攻撃シミュレーション担当 → レッドチームリーダー
- OSINT/脆弱性研究者 → 実戦型エクスプロイト設計者 → レッドチーム統括
🔍 ストーリー:実務から演習統括へ
Jさんはペネトレーションテスト部門で3年間活動し、複数の企業でAD環境への侵入成功を経験。その後、Red Team Exerciseを設計・主導する役割に抜擢され、経営層向けにセキュリティの現状と改善提案をプレゼンするまでに成長しました。
6. レッドチームエンジニアの将来展望と需要の高まり
サイバー攻撃が高度化する中、レッドチームエンジニアの重要性は年々増しています。単なる攻撃者模倣にとどまらず、「組織横断での防御力向上」を担う存在へと進化しています。
- ランサムウェア対策としての演習導入の拡大
- クラウド・ゼロトラスト環境への対応スキル需要
- サイバー演習(Red/Blue/Purple Team)の標準化
- 経営層を巻き込んだリスク認識の高度化
- 攻撃→検知→対処の全体連携力の強化
🔍 ストーリー:危機意識の変革
Tさんは多国籍企業のRed Team Leadとして、模擬APT攻撃を設計・実行。CISOや経営陣にその“検知されない攻撃”の事実を提示し、全社のセキュリティ予算増額とログ監視体制の刷新に貢献しました。
7. レッドチームエンジニアを目指すための学習方法
1. 攻撃技術の習得
- Windows/Linux環境における特権昇格・水平移動
- Active Directory攻撃(Kerberoasting、Pass-the-Hashなど)
- C2通信、フィッシング、Payload開発
2. 実戦演習と検証
- Red Team Lab(Hack The Box、TryHackMeなど)
- MITRE ATT&CK、Atomic Red Teamによるシナリオ構築
- Purple Team活動による検知ルールとの照合
3. ツール活用と自作スクリプト
- Cobalt Strike、Mythic、SliverなどのC2ツール
- BloodHound、SharpHoundでの関係性可視化
- Python、PowerShell、Goによるカスタムツール開発
4. フレームワークとマネジメント理解
- NIST CSF、MITRE D3FEND、攻撃マトリクスの運用
- 演習計画・目標設定、レポーティングスキル
- 経営層へのプレゼン資料作成とレポート技術
8. 面接でよくある質問とその対策(レッドチームエンジニア)
質問例と回答のポイント(抜粋20問)
レッドチームとペネトレーションテストの違いを説明してください。
- 回答ポイント:目的(実戦演習 vs 脆弱性検出)、期間、対象範囲の違いを明確に。
これまでに実施したレッドチーム演習での工夫を教えてください。
- 回答ポイント:攻撃手法の選定理由、検知回避、報告方法など。
MITRE ATT&CKの活用経験はありますか?
- 回答ポイント:シナリオ設計、攻撃チェーンとの対応づけ。
Cobalt StrikeやMythicの使用経験を教えてください。
- 回答ポイント:C2通信、ステージング、ビーコン制御の理解。
AD環境に対する攻撃をどのように実行しましたか?
- 回答ポイント:BloodHoundでの関係性マップ、LAPS、Kerberoasting、DCsyncなど。
ブルーチームとの協働経験は?
- 回答ポイント:検知精度の評価、ログ分析支援、改善フィードバック。
OSINTを使ったターゲット選定の例を教えてください。
EDRを回避する工夫にはどんなものがありますか?
スクリプト言語で自作ツールを作った経験は?
- 回答ポイント:PythonやPowerShellでのC2連携、リコンツール開発。
クラウド環境への攻撃経験はありますか?
回答ポイント:IAM権限の誤設定探索、S3バケット公開チェック、Azure権限昇格など。
Red Team Exerciseの設計で重視することは?
- 攻撃シナリオの作成時に気をつける倫理的な配慮は?
- 検知された場合の対応手順は?
- ゼロトラスト環境における攻撃戦略は?
- Active Directory以外の横展開技術について教えてください。
- リスク報告書の作成で意識するポイントは?
- C2通信の隠蔽技術(DNSトンネリングなど)の使用経験は?
- Blue/Purple Team活動との違いや連携方法は?
- サイバー演習でCISOと連携した経験は?
- 今後挑戦したい脅威領域・技術は?
これらの質問は、レッドチームエンジニアとしての攻撃技術力、演習設計力、検知・報告能力、そして協働・倫理意識を見極めるためのものです。自身の実体験をもとに、論理的かつ具体的に説明できるよう準備しておくと効果的です。