30日間で習得するデータモデリングの実践活用術
データモデリングは、単なる設計技術ではなく、組織の意思決定・業務効率・分析力を支える“見えない骨格”である。しかし、実務で活かすには、設計原理の理解だけでなく、段階的な活用・改善・定着が必要だ。
本記事では「30日間」をテーマに、初心者から中級者が効率よくスキルを身につけるための戦略と、業務に活かすためのアプローチを日別に分けて解説する。
1〜5日目:基礎の理解とマインドセット形成
- 1日目:データモデリングとは何か(目的、種類、メリット)
- 2日目:ER図の読み方と基本記号(エンティティ、リレーション、カーディナリティ)
- 3日目:概念モデルと論理モデルの違いを理解
- 4日目:正規化の基礎(第1〜第3正規形)
- 5日目:非正規化とパフォーマンス設計のバランス思考
ポイント:書籍やオンライン教材を使って、図を手で描く練習をすることが大切。
6〜10日目:小規模シナリオでの設計演習
- 6日目:顧客・商品・注文という基本3エンティティでモデリング演習
- 7日目:JOINによる結合処理とインデックス設計の基礎
- 8日目:PKとFKの意味と適用方法をケーススタディで学ぶ
- 9日目:ERDツール(例:dbdiagram.io、draw.io)を使ってモデル化
- 10日目:ユースケースに基づいたCRUD設計の確認
小さなスキーマでも「検索」「更新」「削除」すべての流れを意識する。
11〜15日目:業務データへの応用とレビュー
- 11日目:社内の既存業務フローをモデル化してみる
- 12日目:業務KPIに結びつくようなデータ構造を意識
- 13日目:他チーム(マーケティング、会計など)の視点からレビューをもらう
- 14日目:データ辞書を作成し、用語と定義を明確化
- 15日目:レビュー結果をもとにデータ構造を改善
チームでのレビューを通じて「伝わるモデル」に昇華させることが重要。
16〜20日目:拡張設計とクラウド連携
- 16日目:BigQueryやRedshiftの物理設計パターンを学ぶ
- 17日目:パーティショニングとクラスタリングの最適化
- 18日目:ストリーミングデータへの対応(ログ、IoT、クリックストリーム)
- 19日目:データレイクとデータウェアハウスの連携構造
- 20日目:セキュリティとアクセス制御(Row-Level Securityなど)
モデルは「保存」だけでなく「分析しやすさ」や「セキュリティ」も設計に含む。
21〜25日目:高度なパターンとガバナンス
- 21日目:SCD(Slowly Changing Dimension)パターン
- 22日目:履歴管理や差分集計のための設計(カレンダーテーブルなど)
- 23日目:データ品質管理(欠損値、形式異常、重複)を考慮した構造
- 24日目:マスターデータ管理(MDM)とそのモデリング
- 25日目:データガバナンスとの統合設計
複雑な業務ほど「例外の扱い方」によってモデルの品質が決まる。
26〜30日目:実務展開と振り返り
- 26日目:プロジェクトで使用している既存スキーマの分析
- 27日目:改修提案とそのインパクト試算
- 28日目:モデリングテンプレートの作成(自社用フォーマット)
- 29日目:CI/CDパイプラインでのスキーマ管理方法(dbtやLiquibase)
- 30日目:振り返りと今後の学習計画策定
モデルは生き物。継続的な改善プロセス(モデルのライフサイクル)も重要。
まとめ
30日間という短期間であっても、戦略的に取り組めば、実務で通用するスキルを身につけることは十分可能である。
重要なのは、ツールの操作よりも「どんな視点で構造を捉えるか」であり、現場で信頼される“設計者”になるためには、他者との対話やレビューを経た実践の積み重ねがカギとなる。
“良いデータモデルは、良い対話から生まれる。”